こんにちは、管理人のひかるです。
本業はプロ家庭教師をしているので、教育関連の本を読むことが多いです。
ここ最近読んだ本の中で、とても参考になった本はこちら↓
中室牧子さんの『「学力」の経済学』
です。
子育てや教育って、自分の感覚や経験ベースでやってしまいがちです。
「自分はそうやってきた」、「親からそう育てられた」という方法で、子どもを指導してしまうことって多いですね。
でも、中には効果が薄い方法、逆効果になってしまう方法もあります。
どういう教育が効果が出ているのか、実はデータで検証されています。
- 子育て中のママ・パパ
- 教育業界・受験業界で働くかた
におすすめの本です。
『「学力」の経済学』はこんな本
この本をひとことでまとめると、
教育の成果をデータで検証した本
です。
著者は教育経済学者である中室牧子さんというかたで、最近テレビにも出演されています。
「教育経済学」というのは、『「学力」の経済学』によると、こんな学問↓
教育経済学は、教育を経済学の理論や手法を用いて分析することを目的としている応用経済学の一分野です。
『「学力」の経済学』より引用
つまり、大規模なデータを使って、教育を研究するということですね。
これまで行われてきた教育法・指導法の中には、実は効果が薄い、薄いどころか逆効果・悪影響を及ぼす方法もあるとのこと。
たとえば、
『「学力」の経済学』より引用
- ご褒美で釣っても「よい」
- ほめ育てしては「いけない」
- ゲームをしても「暴力的にはならない」
などです。
めっちゃ興味深いですね。
最近は、「褒めて伸ばそう」っていう風潮がありますが、ほめ方を間違ってしまうと、努力しない子に育ってしまうと本編で書かれています。
子どもが成長するまでデータを取り続けなければならないので、教育の研究は時間がかかってしまいます。
で、じゅうぶんに教育の成果が検証されないまま、感覚・経験則や憶測で「○○教育がいいんじゃないか!」みたいな教育法・指導法が導入されちゃいます。

私、「ゆとり教育」ど真ん中です
新しい教育法を導入するのなら、きちんと検証されたものを。
新しい教育法が導入されたのなら、どんな成果がでたのかきちんと検証してほしいものです。
『「学力」の経済学』の目次・章立てはこんな感じ↓
『「学力」の経済学』より引用
- 他人の“成功体験”はわが子にも活かせるのか?
- 子どもを“ご褒美”で釣ってはいけないのか?
- “勉強”は本当にそんなに大切なのか?
- “少人数学級”には効果があるのか?
- “いい先生”とはどんな先生なのか?
世界でどんな研究結果が出ているのか、学べる本です。
『「学力」の経済学』のインプット
この本の中には、教育に関するたくさんの研究データが出てきます。
その中でも私が興味深いと感じたもの、指導に活かせると感じたものを、備忘録がわりにまとめておきます。
- テスト結果へのご褒美は効果がない
- ゲームの時間を制限しても勉強時間は増えない
- 内申点って意外と重要かも
- 女子の方が優秀
の3つを書き残しておきます。
テスト結果へのご褒美は効果がない
プロ家庭教師として、指導にうかがっていると、

テストで80点取ったら、ゲームで課金させてもらえるねん
などと言う子がけっこういます。
テスト結果に応じてご褒美がもらえるシステムですが、実はコレ、効果がないそうです。
学力テストの結果がよくなったのは、インプットにご褒美を与えられた子どもたちだったのです。(中略)一方で、アウトプットにご褒美を与えられた子どもたちの学力は、以外にも、まったく改善しませんでした。
『「学力」の経済学』より引用
この場合、「インプット」というのは実際におこなった勉強のことで、「アウトプット」というのはテスト結果です。
つまり、勉強のやり方を具体的に教えてもらい、それを実行したらご褒美をもらえた方が、成績が上がったということです。
それもそのはず、実際に正しいやり方で勉強を実行したのですから。
それに対して、テスト結果に対して「エサ」を釣っても、勉強のやり方がわからない子はアクションを起こせません。
その結果、ご褒美がもらえないだけでなく、「成績が上がらない…(実際には行動を起こしていない)」と感じて、自己肯定感も上がりません。

心当たりあるわ…
逆に、すでに勉強のやり方がわかっている子には、アウトプットにご褒美をぶら下げても成果が出るはずです。
家庭でご褒美で釣るときには、「エサ」の出し方に注意しなければなりません。
ゲームの時間を制限しても勉強時間は増えない

うちの子、ゲームし過ぎやから、ゲームの時間は1日30分だけっていうルールを決めましたわ
みたいなルール作りをするご家庭は、けっこう多いですよね。
わが家でも、アニメを見るのは、朝と夕方それぞれ30分だけと決めています。
ただ、「ゲーム時間を制限した=勉強するようになる」と考えるのはNGです。
1時間テレビやゲームをやめさせたとしても、男子については最大1.86分、女子については最大2.70分、学習時間が増加するにすぎないことが明らかになりました。
『「学力」の経済学』より引用
めっちゃおもしろいですね(笑)
テレビやゲームの時間を制限したとしても、結局は勉強以内の別のことに時間を費やしているってことです。
さきほどの「ご褒美」と同じで、テレビやゲームの代わりに、何をどう勉強するのかを具体的に示さないといけないでしょう。
特に最近は、テレビやゲームよりも、スマホ(SNS・動画)にどっぷりハマっている子の方が多いかもしれません。
中室牧子さんは次のようにも書かれています。
私たちの研究では、テレビ視聴やゲーム使用の時間が長くなりすぎると、子どもの発達や学習への悪影響が飛躍的に大きくなることが示されています。
『「学力」の経済学』より引用
テレビ・ゲーム・スマホなどの機器に触れる時間が長すぎるのは、もちろん良くありません。
大人にとっても、耳が痛い話ではあります…
内申点って意外と重要かも
最近では、「勉強の成績が良い=認知能力が高い」ことだけでなく、「非認知能力」にも注目が集まっています。
「非認知能力」とは、意欲や我慢強さ、コミュニケーションスキルなど、主に勉強の周辺能力です。
これらの非認知能力は、社会に出てから重視されるようになります。
非認知能力について、おもしろい研究結果が掲載されています。
高校でよい成績を取る過程で獲得した非認知能力(まじめ、先生との関係がよい、計画性がある、やり抜く力がある、など)は、高校を卒業した後も、彼らを成功に導いてくれたのです。
『「学力」の経済学』より引用
これって評定、つまり、「内申点」の意義を示していると思いませんか?
「内申点」というと、「地域によって不公平」、「教師の主観が入る」、「先生にごまをすらないといけない」など批判があります。
内申点は、テストの点数だけでなく、
などが評価されます。
これらは社会に出てからも求められるポイントでもあります。
逆に、仕事の〆切を守らない、仕事に熱心に取り組まない、遅刻・欠勤が多いとなると、社会人としてやっていけません。
きちんと内申点が良い子が評価され、良い学校に進学し、希望する企業に就職し、仕事で結果を出す。
そういうまじめな子どもたちを評価してあげるシステムがあってもいいと、私自身は思っています。

キリギリスよりも、アリの努力の過程を評価するのが、内申点なんかもな
もちろん現在の日本の評定(内申点)が、子どもたちの非認知能力をきちんと評価できているかは不明です。
実際、地域・学校・教師によって出る不公平も、解消しなければなりませんね。
女子の方が優秀
男子にはショッキングなデータも載っています。
多くの研究で、男子よりも女子のほうが成績がよいことが明らかになっている。(中略)その理由には諸説あるものの、はっきりとしたことはいまだによくわかっていない。
『「学力」の経済学』より引用
がんばれ!男子(笑)
ただ、「女子の方が成績が良い」っていうバイアスをかけるのも、子どもにとってはよくありませんね。
そういうバイアスって、子ども本人にとっては「呪い」みたいなもんです。
よくありますよね、「男の子は国語が苦手」とか。
そういうバイアスをかけられちゃうと、子どもに限らず、人間って本当にそうなっちゃうこともあります。

男だから、国語はできなくて当然やねん
と開き直って、国語の勉強をしなくなっちゃうとかね。
データは大切ですが、データはあくまでデータであり、過去の集積です。
その子がこれからどう成長していくのかなんて、大人が勝手に決めつけちゃいけないと私は思っています。
それにしても、女子の方が成績がいい理由ははっきりわかっていないっていうのは、男子にとっては救いがないですよね…
まとめ:『「学力」の経済学』データで教育を検証せよ【書評15】
その他にも、親の収入と子どもの学力の相関性、子どもの頃に夏休みの宿題を後回しにしていた人の末路など、興味深くもショッキングなデータがたくさん載っています。
感覚や経験によらず、データで教育を語る。
けっこう説得力がありますね。
- 子育て中のママ・パパ
- 教育業界・受験業界で働くかた
は、読んでみる価値ありです!