こんにちは、管理人のひかるです。
文庫サイズなので、すぐに読めちゃう絵本を紹介します。
村上春樹さんと佐々木マキさんの『羊男のクリスマス』
です。
子どもが読んでも楽しめるかもしれませんが、おとなが読んでクスッと笑うタイプの「クセつよ」絵本。
村上春樹ファンも佐々木マキファンも、どちらも楽しめます!
『羊男のクリスマス』はこんな本
「羊男」は、村上春樹さんの小説『羊をめぐる冒険』などにちょくちょく登場するおなじみのキャラクターです。
羊そのものではなく、「羊衣装」を着ているそうです。
羊男も、依頼にやってきた男も夏用の羊衣裳の下でぐっしょりと汗をかいていた。
『羊男のクリスマス』より引用
暑そうな夏服(笑)
こんな調子で、大人だからこそ笑えるユーモアあふれる絵本になっています。
イラストを描いているのは、絵本作家・イラストレーターの佐々木マキさん。
佐々木マキさん自身の絵本も、ユーモアたっぷりです。
『まじょのすいぞくかん』を娘に読みましたが、親が爆笑しちゃいました。
『羊男のクリスマス』のあらすじは、
羊男上人様の没後2500年を記念する羊男音楽を作るよう、羊男は羊男協会から依頼される。でも、12月24日に穴の開いた食べ物(ドーナツ)を食べてしまった羊男は呪われてしまい、作曲することができない。呪いを解く方法を、羊博士から教えてもらった羊男は旅に出る。
です。
あらすじだけでも、クセがすごい!
羊男を助けてくれるキャラクターたちが何人も登場するのですが、みんなくせ者だらけ。
羊男の呪いは解けて、無事に羊男音楽を作ることができたのでしょうか?

羊男上人様を慰める羊男音楽って何やねん(笑)
佐々木マキさんの描く羊男は、なかなかキュートで憎めないビジュアルです。
一方、村上春樹さん自身が描いた羊男は、『羊をめぐる冒険』に登場しますが、近寄りがたい風貌です。
『図書館奇譚』には、ドイツ人イラストレーターのカット・メンシックさんが描いたイケメン羊男も登場します。
※『図書館奇譚』の考察&レビューはこちらです↓
村上さんはきっと羊男がお気に入りですし、いろんな人に羊男は愛されているんでしょうね。
『羊男のクリスマス』と他の村上作品
ただただ村上春樹&佐々木マキのユーモアを味わう本なので、考察なんかは不要です。
ただ、『羊男のクリスマス』には、村上春樹さんの他の小説に登場するキャラクターも出てきます。
こういうスピンオフっぽい作品を読むと、別の作品も読み返したくなりますね。
気になったシーンはこちら
- 食べ物で呪いをかけられた人は羊男以外にもいる
- 双子の女の子208と209
の2点。
食べ物で呪いをかけられた人は羊男以外にもいる
羊男は、クリスマス・イブに穴の開いた食べ物(ドーナツ)を食べてしまい、呪われてしまいます。
「食べ物で呪われた人が他にもいたぞ…」とデジャブを覚えました。
村上春樹さんの短編『パン屋を襲う』も、パン屋を襲撃してたらふく食べて呪われた主人公がいました。
で、「僕」は呪いを解くために、再びパン屋(マクドナルド)を襲撃するという、こちらも「クセつよ」設定でユーモアたっぷりな村上さんを楽しめます。
※『パン屋を襲う』のレビューはこちらです↓
『羊男のクリスマス』、『パン屋を襲う』だけでなく、村上作品では呪いや内面の課題を解決するために、旅に出る主人公は多いですね。
ちなみに『羊男のクリスマス』には、
羊博士は六個のドーナツのうち四個までを息もつかずにむしゃむしゃと食べ、残りの二個を大事そうに戸だなにしまった。
『羊男のクリスマス』より引用
という描写があります。
このシーンにも、なんか既視感を覚えたのですが、これまた『パン屋を襲う』にこの数字が出てきていました。
仕方なく我々は缶ビールを開けて飲んだ。妻はビールをそれほど好まなかったので、僕は六本のうちの四本を飲み、彼女が残りの二本を飲むことになった。
『パン屋を襲う』より引用
6ー4=2
この数字になんか意味あんのかな?
「何か物事の始まりには、6つのうち4つを口にしなければならない。やれやれ」みたいな小説がどこかにありましたっけ(笑)
村上春樹さんのファンである「ハルキスト」の皆さんなら、何かご存知かも。
双子の女の子208と209
『羊男のクリスマス』には、双子の女の子208と209が登場します。
こちらは既視感どうこうではなく、彼女たちは『1973年のピンボール』に登場します。
交互に2人がしゃべる光景が、非現実的で美しく、ずっと好きでした。
久々にビールを飲みながら『1973年のピンボール』を読みたくなってきました。

村上作品を読むと、ビールを飲みたくなるのはなぜだろう
まとめ:『羊男のクリスマス』村上春樹&佐々木マキのクセつよ絵本【書評17】
短編(絵本)なので、村上春樹さんの小説は初めてというかたにも、読みやすい作品です。
もちろん村上春樹さんの作品おなじみの懐かしいキャラクターが登場するので、村上さんファンも楽しめます。
羊男世界がいつまでも平和で幸せでありますように
『パン屋を襲う』より引用
「クセがすごい」絵本ではありますが、読み終わったときには、羊男が愛すべき存在になっています。
クリスマスに読むのもおすすめですよ!