『騎士団長殺し 第1部(下)』イデアと免色、そして物語が動き出す【書評27】

騎士団長殺し1下 小説

こんにちは、管理人のひかるです。

読み始めると止まらん…

『騎士団長殺し 第1部(下)』村上春樹

です。

第1部(上)は不気味に幕を開けましたが、第1部(下)は一気に物語が進みます。

振り回される主人公「私」と同様、読者も揺さぶられ、『騎士団長殺し』の世界へと深く沈みこんでゆく…

『騎士団長殺し 第1部(下)』はこんな本

『騎士団長殺し』は村上春樹さんの長編小説です。

第1部・第2部に分かれ、文庫版ではそれぞれ上巻・下巻があり、今回レビューするのは「第1部(下)」。

つまり、4分冊の2冊目にあたります。

起承転結の「承」にあたり、物語がどんどん進んでいきます

※『騎士団長殺し 第1部(上)』のレビューはこちらです↓

『騎士団長殺し 第1部(下)』のあらすじをまとめておきます。

※ネタバレになりますので、まだお読みでないかたはご注意ください。

第1部の上巻で掘り出した「鈴のようなもの」。
鈴を鳴らし、主人公「私」を読んでいたのは、絵画の「騎士団長」の姿をした「イデア」だった。
イデアが顕れ、「私」は免色渉の肖像画を完成させた。
免色は「私」を自宅に招くが、そこで、山奥の豪邸を買い取って1人で暮らしている理由を明かし、また、別件を「私」に依頼する。
自分の娘「かもしれない」少女の肖像画を描いてほしいという依頼だった。
傷心ドライブでのできごと、妻との離婚、幼くして亡くなった妹の記憶、そして、絵画『騎士団長殺し』と画家・雨田具彦の謎…
あらゆるものが「私」を揺さぶり、流してゆく。

何かよくわからないことが巻き起こっている。

でも、「私」は確実に何かに巻き込まれ、物語は加速しつつあります。

管理人ひかる
管理人ひかる

ページをめくる手が止まらない!

『騎士団長殺し 第1部(下)』で回収された伏線・謎

『騎士団長殺し 第1部(上)』の謎の中で、第1部(下)で明かされたものもいくつかありました。

下巻で明かされた謎は、

  • 石室から出てきた「鈴のようなもの」
  • 免色渉の目的
  • 一度だけ例外的に寝た女

の3つです。

石室から出てきた「鈴のようなもの」

「私」が住んでいる家(日本画家・雨田具彦邸)の敷地から掘り出された「鈴のようなもの」。

その鈴を鳴らして、「私」を呼んでいたのは「イデア」でした。

あたしはただあの人物の姿かたちをとりあえず借用しただけだ。こうして諸君と向かい合うためには、何かしらの姿かたちは必要だからね。だからあの騎士団長の形体を便宜上拝借したのだ。

『騎士団長殺し 第1部(下)』より引用

つまり、イデアは概念的な存在であり、ただ騎士団長の姿を借りるのが都合がよかったとのこと。

『ジョジョの奇妙な冒険』第6部のスタンド「ボヘミアンラプソディ」のように、絵画の中から抜け出たわけではないようです。

「イデア」の特徴は、こんな感じ↓

  • 言葉づかいが独特(「あらない」など)
  • くすくす笑う
  • 明るい時間に形体化するのは疲れる
  • 招待されないと移動できない
  • ひたすら見て一次情報を集める(プライバシーはない)

どうして石室の中で、鈴とともに閉じ込められていたかまでは、覚えていないようでした。

おそらく上巻の仮説通り、肉体を失った「即身仏」なのではないかとは思います。

免色渉の目的

また、免色が「私」に肖像画を依頼してきた目的の一部が判明しました。

自分の肖像画を(法外な報酬で)描かせたのは、自分の娘「かもしれない」少女の絵を描かせるためでした。

そして、免色が山奥の豪邸を買い取った理由も、その少女の姿を見るためだったことが明かされます。

「実をいいますと、あなたは既に彼女を知っています。そして彼女もあなたのことをよく知っています」(中略)
私は言った。「秋川まりえは小田原の絵画教室に来ている女の子ですね?」

『騎士団長殺し 第1部(下)』より引用

この告白、鳥肌立ちました…

管理人ひかる
管理人ひかる

「俺が鎧の巨人で こいつが超大型巨人ってやつだ」は全然鳥肌立たなかった(『進撃の巨人』)

免色は、少女との血縁をDNA鑑定などで正式に調べるつもりはないとのこと。

「私」の肖像画は、その人物の本質をとらえます。

免色はきっと「私」が描く肖像画を見れば、自分の本当の娘かどうかわかると考えているのかもしれません。

少女の肖像画の完成は、第2部に持ち越しになるので、免色の目的の全貌はまだ明らかにはなりません。

一度だけ例外的に寝た女

第1部上巻で意味深に書かれていた「一度だけ例外的に寝た女」が、下巻に登場します。

「私」が妻に別れを告げられ、ドライブ旅で訪れた東北地方の町はずれの国道沿いのファミリー・レストランで突如女は登場しました。

「知り合いのような顔をして」

『騎士団長殺し 第1部(下)』より引用

そう言って「私」と相席し、そのままラブホテルへ。

翌朝、目を覚ますと、女はいなくなっていました。

そして、朝食を食べに昨夜と同じファミリー・レストランに行くと、昨夜と同じ男(白いスバル・フォレスターの男)がいました。

「私」と男と目が合った、

おまえがどこで何をしていたかおれにはちゃんとわかっているぞ、と彼は告げているようだった。

『騎士団長殺し 第1部(下)』より引用

「私」はのちに「白いスバル・フォレスターの男」の肖像を描かずにはいられなくなります。

この2人の人物が、どんな役割を果たすのか、新たな謎が出ました…

それにしても、スバルのフォレスターは災難ですね。

私の観点からすれば、とくに美しい車とは言いがたい。ごく当たり前の小型SUV、実用のために作られたずんぐりとした機械だ。それに思わず手を触れてみたくなるというような人はかなり少ないだろう。

『騎士団長殺し 第1部(下)』より引用

突然ディスられましたからね(笑)

『騎士団長殺し 第1部(下)』で残る謎

第1部上巻の謎のうち、以上3点の謎は明かされましたが、まだ回収されていない伏線もあります。

  • プロローグの〈顔のない男〉とペンギンの人形
  • 絵画『騎士団長殺し』と「顔なが」
  • 雨田具彦が日本画家に転向した経緯

に関しては、まだ謎のまま。

解決は第2部へ持ち越されます。

また、第1部下巻で新たな謎も生まれました。

  • 白いスバル・フォレスターの男の目
  • イデアは「私」にだけ見えているのか
  • 免色渉は信用できる人物なのか
  • 「ふりだけでは終わらない要因」とは?
  • 石室のふたの重しの並びが変わっている

の5点です。

紹介していきます!

白いスバル・フォレスターの男の目

さきほど書いた「一度だけ例外的に寝た女」の伏線回収で出てきた新たな謎。

「私」が書かずにはいられなくなった「白いスバル・フォレスターの男」です。

この男の眼の光について、「私」は次のように言っています。

おまえがどこで何をしていたかおれにはちゃんとわかっているぞ、と彼は告げていた。その目に宿っている重い冷徹な光には、見覚えがあった。それはたぶん私がどこか他の場所で目にしたことのある光だった。しかしそれがどこでだったか、いつだったか、私には思い出せなかった。

『騎士団長殺し 第1部(下)』より引用

この書き方は、さすがに後で伏線を回収してくれますよね。

これまでに登場した人物の視線なのか、これから新たに登場する人物の目の光なのか…

イデアは「私」にだけ見えているのか

イデアは鈴のようなものを鳴らし、「私」に気づかせ、石室から抜け出しました。

「私」にはイデアは見えますが、免色には見えません。

免色邸に招かれたときには、イデア(騎士団長)はいないものとして振る舞うよう「私」に忠告していました。

ただ、イデアの言ったこの言葉が引っ掛かります。

「ほかにちょっと行くところもあるからな。あまり暇があらない」

『騎士団長殺し 第1部(下)』より引用

イデアは確かに世の中のあらゆることを観察し、知っています。

だから、もちろん「別のところで世の中を観察してくる」という意味合いなのかもしれません。

でも、「別の姿に形体化して、他の人間に会ってくる」という意味だとすると、イデアは「私」以外の人間と会って話している可能性があります。

「私」のことを「諸君」と呼んでいます。

もしかしたら「私」以外に人間にも「諸君」と呼び掛けているのでは

免色渉は信用できる人物なのか

さきほど紹介した通り、この第1部下巻で、免色が「私」にコンタクトを取ってきた理由がだんだん見えてきました。

自分の娘「かもしれない」少女の絵を描かせるためです。

財力と人脈、そして、持ち前の手際の良さで「私」を巻き込んでいく。

免色は「私」にこのように言いました。

「うまく説明はできないのですが、あなたに対してはある程度無防備になってかまわないだろうという気持ちが、お会いした最初の日から私の中に生まれたような気がします」

『騎士団長殺し 第1部(下)』より引用

石室の中に閉じこもり、自分の命を「私」に委ねたところを見ると、確かに免色は「私」を(ある程度)信用しているようです。

一方で、「私」にとって、免色は信用に足る人物なのかは不明です。

自分の娘「かもしれない」少女の絵を描かせてどうしたいのか、まだ明かされていません。

また、免色がかつて東京拘置所にいたという記述もあります。

「ふりだけでは終わらない要因」とは?

読む手が止まらないほどおもしろいのですが、先が気になり過ぎて、読むのが雑になってしまいます(笑)

そんな物語の終盤で、意味深な記述がありました。

私は自分がその女(名前も知らない若い女)を最後の瞬間に本当に絞め殺してしまうのではないかと、こころのそこで恐れていたのだ。(略)ふりだけでは終わらないかもしれなかった。そしてそのふりだけでは終わらない要因は、私自身の中にあった。

『騎士団長殺し 第1部(下)』より引用

どういうことや…

これまでのストーリーで「私」にそんな性質があるとは書かれていませんでした。

また、前後のページにこんな記述もありました。

宿痾、と私は思った。治療の見込みのないろくでもない病。理屈の通用しない体質的傾向。

『騎士団長殺し 第1部(下)』より引用

まだ明かされていない「私」の「宿痾」が、今後の物語のカギになっていくのでしょうか。

村上春樹さんの作品でこんな設定って、今までありましたっけ?

ちょっと意外な展開です…

石室のふたの重しの並びが変わっている

これはわかりやすい伏線です。

誰かが石室を開けたんですね。

しかしその石の並び方は、前に目にしたときとは少しばかり違っているような気がした。だいたいは同じなのだが、少しだけ配置が違っているみたいだ。

『騎士団長殺し 第1部(下)』より引用

誰が、なんのために?

とりあえず第2部を買いにいきます。

まとめ:『騎士団長殺し 第1部(下)』イデアと免色、そして物語が動き出す【書評27】

『騎士団長殺し』第1部下巻で出てきた伏線・謎をまとめておきました。

謎は深まるばかり…

そういえば免色がこんなことを言っていました。

「好奇心が殺すのは何も猫だけじゃありません」

『騎士団長殺し 第1部(下)』より引用

「好奇心は猫をも殺す」って言葉、小中学生の頃、マンガ『あやつり左近』で初めて知りました。

久々に『あやつり左近』を読んでみたくなってきた…

近々読み返して、レビューしようと思います。

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