こんにちは、管理人のひかるです。
一般的な単行本サイズでもなく、文庫本でもない。
Yシャツの胸ポケットに入る小さな本。
ほほ笑む口元が描かれた表紙が、書店で異様さを放っていました。
『口に関するアンケート』背筋
です。
小さくて薄い本ですが、侮ってはいけません。
心して読まなければなりません。

口は災いのもと…
『口に関するアンケート』はこんな本
『口に関するアンケート』は、映画化もされたホラー小説『近畿地方のある場所について』を書いた背筋さんの作品です。
さきほど紹介した通り、特徴は何といっても、異様な見た目…
胸ポケットに入る小サイズで、不気味にほほ笑む表紙が、書店で異彩を放ちます…
これまでの背筋さんの作品と同様、「モニュメンタリ―形式」で話が展開していきます。
モニュメンタリーとは、フィクションをドキュメンタリーのように演出する方法です。
独白や手紙、インタビューや記事などの形式でストーリーが進むため、リアリティがあります。

それが不気味なんですよね…
今回の『口に関するアンケート』では、肝試しをした大学生たちの独白が記録されています。
彼らが語る言葉を読んでいくうちに、読者はだんだんと事件の全貌が見えてくる…
※『近畿地方のある場所について』は怖すぎて読み返して考察できませんでした…↓
※背筋さん第2作『穢れた聖地巡礼について』の考察はこちらです↓
『口に関するアンケート』を考察
『口に関するアンケート』は短いながらも、一部「叙述トリック」が使われています。
ですので、読みながら少し混乱しつつ、後で「あ、そういうことか」と腑に落ちる構成になっています。

大どんでん返し!というほどの叙述トリックではありません
トリックを考察・整理していきます。
※ネタバレになりますので、これから読まれる方はご注意ください。
各章の数字と記号について
『口に関するアンケート』は、各章に数字と記号がついています。
【201908262310.m4a】
『口に関するアンケート』より引用
この数字が変わるごと、話者が交代していきます。
数字はどうやら年月日と時刻を表していそうですよね。
「2019年8月26日23時10分」という感じ。
後ろの「m4a」はiPhoneなどで使われる音声ファイルのフォーマットらしいですね。
ということは、スマホで録音されたボイスメモが書き起こされたものを、読者は読み進めていくことに気づかされます。
しかも各章のタイトルの数字は、数分おきになっています。
つまり、数分おきに話者が変わって録音されている。
さらに言い換えると、大学生たちは同じ場所に集まって語り合っている、というわけです。
時系列で整理してみる
読んでいるうちに、大学生6人は同じグループなのではなく、2グループに分かれることがだんだんとわかってきます。
- 村井翔太・伊藤竜也・杏・原美玲
- 川瀬健・堀田颯斗
ですね。
そんな無関係の2グループの、5人(杏以外)が集まって、事件の真相を語っていくわけです。
時系列を整理すると…
- 肝試し1番手の村井翔太が「呪いの木」にお願いをする(竜也がセミのようになって…)
- でも、2番手の竜也は木の前を通らなかった(杏について元カレ翔太と車に戻って話すため)
- 3番手の杏に誤って呪いがかかってしまう
- 全員、セミの声を聞く
- 4番手の美玲が杏をいったん助ける
- 美玲は行方不明になる
- 後日、健と颯斗が肝試しをして、「呪いの木」で女(杏)と出会う
- 2人ともセミを声を聞く
- 女(杏)が首をつっているのが発見される
- 5人で集まって語り合っている
ということになるのでしょう。
無関係だった2グループが、一堂に会して事件の真相を語り合う異様さ…
種明かし「口に関するアンケート」
本書の最後に「口に関するアンケート」のページがあります。
もちろん口に関するアンケートが目的ではなく、叙述トリックの種明かしの役割を果たしています。
問5文書内の書き起こし音声のデータは、何に記録されていたと思いますか?(中略)
問7前掲の文章を音読後に、大学生5人が霊園の大木の下でロープを首にかけた状態で、あの日のことを語り合い、自分が話し終えて許されると、ひとりずつ台を蹴って自ら命を絶った光景をイメージしましたか?
「イメージしましたか?」というよりも、「イメージしてね」と背筋さんが囁いているようです…
この問7で、今作のモニュメンタリーの秘密が明かされました。
文字が赤に変わっていくグラデーションが…
各音声データの最後の方の文字が、だんだんと赤へと変わっていきます。
ただ、すべての音声データが変色していくわけではありません。
各話者5人に1回ずつ訪れます。
彼らが自分の話すべきことを語り終えるときに、文字が赤く変わっていく。
目の前で1人1人首を吊っていくのに、次の話者が平然と話し続けていくのが、実はこの本の最も怖いポイントかもしれません…

ほんまやな…
こわ…
裏表紙に光を当ててみると…
小さくて薄い本なので、すぐに読み終わります。
読み終わって本を閉じます。
すると、裏表紙に違和感を覚えます。
いっけん黒く見えるのですが、裏表紙に光を当ててみると…

昔読んだ江國香織の本で、セミが出てきた話がトラウマです…
また、「呪」という漢字には、「口」という字がついています。
呪いは「口」を通して、発せられるものだからでしょう。
本当に「口は災いのもと」ですよね。
そういえば、登場人物の「杏」という漢字にも、「口」という字が入っています。
木の根元にある口…
その「杏」という字からセミの声が聞こえてきそうです。
まとめ:『口に関するアンケート』胸ポケットサイズの新型ホラーを考察【書評28】
ホラー小説でありながら、叙述トリックミステリーの要素を組み込んだ、エンターテインメント作品です。
叙述トリックものは、ネタバレせずに読んで、まんまと騙されるのが醍醐味ですよね。
また、読み返してみてトリックを発見していくのも、またおもしろい。


